No.031
かけのできるまで(1)
2003/09
佐藤 仁彦

今月、来月とカケの製作工程を紹介致します。

1.材料

カケは鹿皮で作ります。指に馴染み、柔軟で自由に伸縮できる特性を持つためです。鹿皮には中国産の大唐(おおとう)中唐(ちゅうとう)小唐(ことう)、日本産の地皮(じがわ)とあり、大唐は皮質が粗く、中唐はこれに次ぎ、小唐は肌理(きめ)が細かく滑らかです。地皮は多少肌理の粗い皮でありましたがカケには適した皮であったそうです。しかし、現代では入手が不可能となっており、全て輸入に頼らざるを得なくなってきております。また、小唐には雲南(うんなん)と毛長(けなが、キョン)とありますが、近年輸出制限により、雲南の入手が不可能となり、鹿皮も入手が困難になってきているのも事実です。

さて、剥いだ皮は脱毛処理をした後、銀皮(表皮)と床皮(肉皮)の二層に分け、白く鞣(なめ)した銀皮をカケに用います。白皮を木枠に糸で張り、風の無い日を選び、藁を燃して出る煙にて燻し、表は濃く、裏は薄く茶色に染め付けます。これをふすべ皮と言い、燻したての皮は煙のヤニによってベタ付きますが、ヤニが定着すると皮もしまり乾燥性も良くなります。また、古くからの技法でありますが、抗菌、消臭、防虫作用を持つ事は現代科学においても証明されています。そのため黒、紺、鶯等に染め付ける時にも煙で燻してから染め付けます。

木枠張り
燻し(いぶし)
燻し後の革

2.裁断、指縫い

皮のお尻の方の最も丈夫な所から台皮(大皮)を取ります。このため、一枚の皮から一つのカケしか作れません。受注した手形を採寸し、射手の手の形を想像し、指の太さ、長さを割り出し、射手に合わせて選んだ皮に所定の大きさになる様、図を書き、裁断します。人指し指中指を縫い、親指の内指を縫い付けた後、手の形になる様にコテで形を整えます。

採寸
裁断
裁断後の台革
指縫い

3.一の腰

薄く削いだ牛の床皮をコテで手の形に整え、台皮に控えとなるよう貼り付けます。射手の注文、弓力に合わせ牛皮の上に鹿皮を貼る等して厚さ、硬さを調整します。この時点までの工程で出来上がりの善し悪しが決定してしまいます。

控え付

以下次号に続く

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弓道コラム(保管庫)
001 弓具を考える「巻藁」
002 職人の独り言(1)
003 温故知新「炭素繊維について」
004 弓と竹の話
005 夏のカケの手入れ方法
006 握り皮の話とフビライの妻の話
007 近代の系譜
008 テレビ放映
009 弦の話
010 直心館弓道場
011 2002年 新年のご挨拶
012 竹取りの感想・籐について
013 日本の弓
014 矢筈について
015 四半的弓道
016 七面鳥染め羽根について
017 竹切り後の作業工程について
018 小笠原流の弓(1)
019 小笠原流式竹矢の製作行程
020 弓道を始める年齢について
021 くすねの使い方
022 環境問題と弓具
023 2003年 新年のご挨拶
024 十年振り返って
025 京の旅と弓の詩
026 職人の独り言(2)
027 道具の手入れ方法
028 神田の話
029 弓書の限界について
030 神出鬼没・JAL機内誌
031 かけのできるまで(1)
032 かけのできるまで(2)
033 和弓の材料としての竹(1)
034 和弓の材料としての竹(2)
035 2004年 新年のご挨拶
036 袴の色々
037 ヤダケについて
038 北本市の桜
039 初心者の弓具の選び方
040 東京都インターハイ予選
041 暑中見舞い申し上げます
042 イーストン社・HOYT社工場見学
043 鷹狩り
044 埼玉まごころ国体にて
045 阿蘇の流鏑馬
046 2005年 新年のご挨拶
047 新文字入り弓巻
048 矯めなおしについて
049 新装開店致しました(1)
050 新装開店致しました(2)
051 2007年 新年のご挨拶
052 合串について