No.006
握り皮の話とフビライの妻の話
2001/09
相澤 岳

握り皮の話

皆様は握り皮をどういった基準で選んでいるでしょうか?。弓の手幅が広い時には薄目の握り皮を選んだり、逆に厚めのものを選んだりしているでしょうか。その次に来るのは柄・色でしょうか。小笠原流では紫色の握り皮は将軍家の色として、遠慮することが決まりになっています。また、小笠原流の巻き方は七巻半又は九巻半が正式なものになります。

柄は様々なものがありますが、浴衣などに使われる柄だけではありません。例えば、菖蒲の模様は同音の「勝負」「尚武」にちなんでいます。また、とんぼも「勝ち虫」と言われるところから柄につかわれます。アルファベットをあしらった柄もあるのですが、これは現代になって出てきたものでなく、江戸時代にはもう作られていました。アルファベットが日本に入ってきた時点から、そのかたちは注目されていたのでしょう。(よく見るとそれらしくアレンジされたアルファベットでないものも含まれています)

一番珍しいのは、正平革の柄でしょう。これには鎧の弦走りの部分の柄が流用されています。獅子牡丹文の外を梅鉢文でうめて、余白に「正平六年六月一日」の字が入っています。ちなみにこの日は歴史的に何かあった日ではないそうです。いつ頃から作り始められた柄なのか、はっきりとは分からないそうです。

上から
  1. 菖蒲柄
  2. とんぼ柄
  3. アルファベット柄
  4. 正平柄
★色・柄指定でのご注文はご遠慮願います。また、入荷の状況により店頭にない場合もございます。

フビライの妻の話

NHKの「北条時宗」で元のフビライが登場しますが、フビライの妻、察必(さっぴ)には弓にちなんだ話が残されています。(旧字は現代のものに直しました)

何時(いつ)の頃にやありけむ、皇帝かつて大府監(たいふかん)の物は軍国の用のように当つべきものにて、私家の物とすべきにあらざるを知りてより、親ら(みずから)女工を敢て(あへて)して宮人(きゅうじん)の先に立ち、もろもろの旧く(ふるく)して廃り(すたり)たる弓の弦を取り寄せ、これを練りもどして薬練(くすね)を去り除き、績ぎ(つむぎ)つ織りつして衣をつくり御(め)したりとなり。弓は古の戒器(じゅうき)の主(おも)なるものとなれば、其の弦も定め多かりしならむ、弓弦の料(れう)はいと良き品なれど、旧(ふ)りては何の甲斐も無かるべきを績ぎ織りて世の用としたる、面白しといふべし(略)

其のほか、北方の人の帽の旧(もと)は眉庇(まびさし)無かりしかば、南するに及びて日の光強きまま弓彎く(ひく)折の目眩しく(まぶしく)て困ず(こうず)る由を夫の帝の物語に聞きて、眉庇を案じ出して(いだして)之を添えつくりしかば、帝大(みかどおおい)に喜びて之を式として、将校兵士に至るまで帽に前簷(まびさし)を附けしめしとなり。又軍兵の馳駆奔突(ちくほんとつ)弓馬使用の便(たより)をはかり、新に一つの衣(い)の様式(すがた)を工夫し、前の方には裳(も)ありて衽(じん)無く、後の長は前に倍して、亦領袖(えりそで)などいふものも無く、綴る(とづる)に両(もろ)襷をもてせる吾が邦の陣羽織といふに似たるやうなるものを造り、名づけて比甲(ひかふ)といひて、人々に用いしめけるに、身軽にして手脚のさばきの宜しく、弓にも馬にも便宜(びんぎ)なりければ、いと広く当時に行われたりといふ。

「忽必烈の妻」幸田露伴 岩波書店 露伴全集より

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